医学部附属病院と創成科学研究科藤井文武准教授の医工共同研究の成果に関する発表が、第60回米国医学物理学会年次講演会にて優秀研究賞に選ばれました

医学部附属病院と創成科学研究科藤井文武准教授の医工共同研究の成果に関する発表が、第60回米国医学物理学会年次講演会にて優秀研究賞に選ばれました

(平成30年8月17日掲載)

医学部附属病院放射線治療部の椎木健裕講師、大学院創成科学研究科機械工学分野の藤井文武准教授らの研究グループが手掛けた、「呼吸性移動を伴う腫瘍に対する放射線治療の品質保証の高度化」の成果に関する研究発表が、アメリカ・テネシー州ナッシュビルで7月29日から8月2日に開催された第60回米国医学物理学会(AAPM)年次講演会にて、優秀研究賞(Best in Physics distinction)に選ばれました。今回の発表では、呼吸により腫瘍位置が変化する腫瘍に対する放射線治療の品質保証にロボットマニピュレータを導入し、現在臨床においては一次元だけの検証に留まっている呼吸性移動を考慮した品質保証を三次元空間で実時間に行えるようにするシステムの提案を行い, 本学医学部附属病院が世界に先駆け臨床開始した動体追跡放射線治療への応用可能性を示しました。

今回の講演会では2000件以上の研究発表が行われましたが、優秀研究賞は「治療技術」「画像処理技術」「治療と画像処理の融合」の各カテゴリーで5件のみ選定されます。これに選ばれた研究には、特別口頭発表およびポスターセッションでの発表の機会が与えられ、その年度における先端研究として来訪者の注目を浴びることになります。知られる限り、本賞をこれまでに受賞した日本人グループはいないということで、 山口大学発の医工共同研究が世界へ認められたことを示しています。

本研究の中で、藤井准教授は、患者さんの腫瘍軌跡軌道に全時間高精度に追従するマニピュレータの制御システムの開発を担いました。一般の産業用マニピュレータは、静止位置目標に対する繰り返し位置決め誤差が1mmを切る精度を達成することを保証していますが、位置制御点の間を移動する途中の追従精度は過渡的に大きな値を取り得ることが知られており、このシステムの臨床利用で要求される「動作開始後全時間三次元誤差1mm以内の追従」は難しい課題です。藤井准教授は「製品システムをベースとした開発であるが故の制約もあり、苦労しましたが、最終的には医学部の先生方が納得される精度を有するシステムを構築することができ、この分野の技術の進歩に貢献できたことを大変うれしく思っています」とコメントしています。また、椎木講師は「本研究の成果は, 様々な呼吸性移動を伴う腫瘍に対する高精度放射線治療を, 安全に患者さんへ提供する一助となると期待されます」と話しています。