工学部研究紹介 研究詳細

ナノサイズ化によるセルロース系天然繊維複合材料の強度発現効果
フィブリル化天然繊維周りのトランスクリスタルと球晶(樹脂はポリプロピレン):矢印の箇所がフィブリル化部であり、結晶化されていると推測される。
結晶性高分子材料をガラス繊維などの人工系強化繊維と複合させると、繊維表面からトランスクリスタル(Transcrystal)と呼ばれる半径方向に柱状に伸びた結晶構造が形成されます。トランスクリスタルの存在は高繊維体積率複合材料においてはさほど影響ありませんが、低繊維体積率複合材料では強度特性に影響が現われます。強化繊維にセルロース系天然繊維を用いても同じ現象が生じますが、天然繊維の表面を引っ掻くとセルロースナノファイバーと呼ばれるナノサイズのフィブリルが剥離して現われ、トランスクリスタルが効率よく生成されるようになります。その結果、結晶性高分子材料の結晶化が促進され、短時間で全体の結晶生成が実現されます。このようなフィブリル化天然繊維を強化繊維として用いると、複合材料の引張強度や界面せん断強度が向上することがわかりました。ナノサイズ化によって複合材料強度を改善する手法の一つとして注目されています。

合田 公一

Goda Koichi

研究関連キーワード
  • 構造用複合材料
  • 木質バイオマス
  • 破壊
  • 信頼性