最近の研究から

アルキル基と水素原子のアルキンへの付加を銅触媒系で精密制御 -シス及びトランス配置アルケンの自在な作り分けが実現!-

アルキル置換アルケンは医農薬品を構成する重要な骨格です。アルキル置換アルケンには、アルキル基とそのβ位の水素原子が同じ側にあるトランス構造とそれとは逆のシス構造があり(上図左右の分子)、これまでに様々な合成方法が研究されてきました。しかし、これらアルケン周りの立体化学を制御するのは容易ではなく、特に、炭素-炭素三重結合を持つアルキンへアルキル基と水素原子を同時に付加させる“ヒドロアルキル化”は、一段階でアルキル置換アルケンを合成できるにも関わらず、従来法では立体選択的付加反応の実現が困難でした。

今回、創成科学研究科応用化学分野の西形孝司准教授(テニュアトラック)らは、銅触媒存在下、異なる水素源を用いることでアルキル基のアルキンへの立体選択的な付加を実現することに成功しました。シス構造を持つアルケンはシラン(H[Si])を用いることで、一方、トランス構造を持つものはアルコール/ジボロン(ROH/B2pin2)を用いることで、それぞれの立体を持つアルキル置換アルケンが合成できることを見出しました。この成果は、『ACS Catalysis』(IF=9.3)に掲載され、月間アクセス数は同雑誌のTOP20以内にランクインしました。

アルケン分子を選択的に合成するための方法論として、今後の複雑分子精密合成化学への応用が期待されます。

Tandem Reactions Enable Trans- and Cis-Hydro-Tertiary-Alkylations Catalyzed by a Copper Salt
Kimiaki Nakamura, Takashi Nishikata*,
ACS Catalysis, 2017, 7, 1049–1052, DOI: 10.1021/acscatal.6b03343

トリフルオロメチル基の新しい導入法を開発

トリフルオロメチル基を有する化合物はフッ素原子がもつ特異的な性質により、医薬、農薬、高分子材料および液晶材料等の様々な産業分野において重宝されています。ケトンのα位がトリフルオロメチル基に置換した化合物は様々な有用化合物へと変換可能です。そのため、その効率的な合成法の開発は重要な研究課題の1つです。これまでにケトンを出発物質として用いる手法ではケトンの活性化およびトリフルオロメチル源の双方が必要でした(式1-3)。

この度、創成科学研究科応用化学分野の川本拓治助教および上村明男教授からなる研究グループはトリフルオロメタンスルホン酸無水物がケトンの活性化剤かつトリフルオロメチル源として機能する新規手法の開発に成功しました(式4)。

この研究成果は『Angewandte Chemie, International Edition』誌(IF = 11.709)に掲載され、『Synfacts』誌にてハイライトされました。

今後、本手法を用いた医農薬品や機能性材料合成への展開が期待されます。

なお、本研究の一部は旭硝子財団・研究奨励および科研費若手研究(B)の助成を受けて実施したものです。

Synthesis of α-Trifluoromethylated Ketones from Vinyl Triflates in the Absence of External Trifluoromethyl Sources
Takuji Kawamoto*, Rio Sasaki, and Akio Kamimura*,
Angewandte Chemie,International Edition, 2017, 56, 1342–1345. DOI: 10.1002/anie.201608591
Highlighted in Synfacts, 2017, 13, 72. DOI:10.1055/s-0036-1589791

アミド基の酸素と窒素の反応性制御に成功 -ラクタムとイミノラクトンの自在な作り分けが実現!-

アミド基は医農薬品を構成する複素環分子を合成するための重要な官能基です。実際に、アミドの反応性を利用した論文はこれまでに数多くの報告例があります。しかしながら、アミド官能基内に有する窒素と酸素の反応部位を、反応条件の違いにより自在に制御できた例はこれまでにありませんでした。この反応性を制御できると、同一の出発原料からラクタム及びイミノラクトンを合成することができるようになるため、長年、アミドの反応性制御法開発が求められていました。

今回、創成科学研究科応用化学分野の西形孝司准教授(テニュアトラック)らは、α-ブロモアミド化合物を銅触媒存在下でアクリル酸誘導体と反応させると、強塩基下では窒素の反応性のみが発現し、対応するイミノラクトンが生成することを発見しました。一方、弱塩基条件で反応を行うと、今度はアミドの酸素のみが反応し、対応するイミノラクトンへと変換されることがわかりました。

この成果は、『ACS Catalysis』(IF=9.3)に掲載されました。

アミド官能基の反応性を化学的に精密制御するための方法論として今後の複素環化学への応用が期待されます。

Different behaviors of a Cu catalyst in amine solvents: Controlling N and O reactivities of amide
Yu Yamane, Koichiro Miyazaki, Takashi Nishikata*,
ACS Catalysis, 2016, 6, 7418−7425, DOI:10.1021/acscatal.6b02309

安価なアルカリフッ化物を用いて選択的フッ素化の新手法を開発-アミドと銅の相互作用を利用-

フッ素はその特異な性質のため有用物質に不可欠な元素であり、例えば医農薬品の実に20~30%にフッ素が含まれています。そのため、分子の効率的フッ素化反応開発は有機合成における最重要課題の一つです。

今回、創成科学研究科応用化学分野の西形孝司准教授(テニュアトラック)らは、銅触媒存在下、複数の炭素-臭素結合を持つ基質に対してフッ素化を行ったところ、3級アルキル基の部分で選択的に反応が進行することを見出しました。反応中に生じるフッ化銅とアミドとの相互作用が選択的なフッ素化を実現していると予想されています。また、フッ素源として従来開発されてきた反応剤よりも安価なフッ化セシウムを用いることができる点も本反応の特徴です。

この研究成果は『Angewandte Chemie, International Edition』(IF=11.709)に掲載され、ハイライト研究として内表紙を飾りました。

新規なフッ素導入法として様々な分野への応用が期待されます。

Site-selective tertiary-alkyl-fluorine bond formation from alpha-bromoamides using a copper-CsF catalyst system
Takashi Nishikata*, Syo Ishida, Ryo Fujimoto,
Angewandte Chemie, International Edition, 2016, 55, 10008-10012. doi:10.1002/anie.201603426R1

応用化学科 麻川 明俊助教の研究がNature Physicsのresearch highlightsで紹介されました

大学院創成科学研究科工学系学域応用化学分野の麻川 明俊助教の研究成果がNature Physicsのresearch highlightsで紹介されました。

応用化学科結晶工学研究室の麻川 明俊助教らは、氷表面の1原子・分子高さの段差を検出できる特殊な光学顕微鏡(図1)を用い、融点 (0°C) 以下の温度で生成する氷表面の水膜(図2)の挙動を様々な水蒸気圧下で調べました。 その結果、2種類の水膜は氷が融けるのではなく、水蒸気が析出することによって生成することを見出しました。従来、これらの水の膜は、氷が溶ける「表面融解」で生成すると考えられてきましたが、本成果によって永年信じられてきた「表面融解」の描像は根底から覆されました(図3)。

以上の成果は、米国科学アカデミー紀要 (インパクトファクター;9.7)に掲載 (PNAS, 113 (7), 1749-1753 , 2016)され、今回Nature誌の姉妹誌であるNature Physicsにより選ばれ、同誌のresearch highlightsに抄録されました 。(Nature Physics, 12 (3), 201 , 2016)

上記の液膜は金属結晶や半導体結晶, 有機結晶などでも観察され、本成果はこれら結晶材料の融点直下での界面現象の解明に貢献すると期待されます。

図1 氷結晶表面上の原子・分子高さの段差を可視化できるレーザー共焦点微分干渉顕微鏡
図2 氷表面を覆う層状と液滴状の水膜
図3 2種類の水膜の生成と水蒸気圧
図の左側は本研究成果を示しており、右側は従来の描像を示している。高い水蒸気圧下では層状と液滴状の水膜が生成するが (A)、水蒸気圧が減少していくと、まず層状の水膜が消滅し (B)、次に液滴状の水膜が消滅する (C)とわかった。

有機硫黄系材料を用いた高性能マグネシウム二次電池の開発に世界で初めて成功

● Journal of Power Sources (Impact Factor: 6.217)に掲載

山吹一大(大学院理工学研究科・助教)、堤宏守(大学院医学系研究科・教授)、吉本信子(大学院理工学研究科・准教授)らの研究チームは、既存のリチウムイオン二次電池の代替として将来的に期待されている、高容量を有するマグネシウム二次電池の開発に成功しました。

開発した二次電池は、リチウムに比べて資源量が多くかつ高い理論容量を持つマグネシウムと硫黄を主な構成元素とするため、資源的な制約を受けることなく高容量化の実現が可能となりました。また、正極材料の構成成分に有機硫黄を用いたマグネシウム硫黄二次電池の開発を世界で初めて成功することができました。さらに、既報のマグネシウム二次電池では作動させるためには高温環境下を必要としているものが多いなか、開発した二次電池においては室温での充放電が可能であることを実証しました。

まだ基礎研究段階であり、長期サイクルでの安定な作動性の確保等が必要となりますが、次世代二次電池の候補としての可能性を示すことができ、今後、よりコンパクトな車載用、住宅用の蓄電デバイスへの応用が期待されます。

“Room temperature rechargeable magnesium batteries with sulfur-containing composite cathodes prepared from elemental sulfur and bis(alkenyl) compound having a cyclic or linear ether unit”
Kanae Itaoka, In-Tae Kim, Kazuhiro Yamabuki, Nobuko Yoshimoto, Hiromori Tsutsumi, Journal of Power Sources, 297, 323-328(2015).
DOI: 10.1016/j.jpowsour.2015.08.029

鋼構造物のリユースによる一歩進んだ資源循環の提案

鋼構造物のリユースによる一歩進んだ資源循環の提案 1976年建設の建物より採取した部材の柱梁接合部実験

大学院理工学研究科・建築デザイン工学分野の藤田 正則教授らのグループは、鋼構造物のリユースによる大幅な環境負荷の軽減を実現するための研究・調査結果をまとめました。

現在、鋼構造物に使用された鋼材は解体後、電気炉によるスクラップ溶融等を経て、再び鋼材としてリサイクルされる資源循環の流れが成立していますが、スクラップ溶融は多くのエネルギーを必要とし、多量のCO2を排出することから、環境に優しく安全な新たな資源循環の流れが求められています。

そこで、有力な方法の一つとして鋼構造物のリユースに着目し、その技術的課題の大部分を解決してきました。今後はこの研究・調査結果が広く公知の事柄となり、活用されることが期待されます。

平成27年10月5日(月曜日)の日刊産業新聞に、藤田教授のインタビューが掲載されており、また12月には、東京で部材リユースに関する「鋼構造環境配慮設計指針」の講習会が開催される予定です。

リモートセンシングを用いたマグロの生息適正海洋環境と漁獲量に関する調査

文部科学省 宇宙科学技術推進調整委託費(宇宙航空科学技術人材育成プログラム)の事業である「大学院の国際連携による衛星リモートセンシングの人材育成」による成果として、ウダヤナ大学(インドネシア)から本学大学院理工学研究科博士後期課程へ留学中のM. D. S., A. B. Sambarさんの論文が、国際学術誌(査読付)に掲載されました。

本研究は全天球衛星データを用いて、インドネシア南方のインド洋を対象に海洋環境(海面温度、クロロフィル濃度、海面高偏差)とその海域のマグロの漁獲量の相関を検討したものです。相関性の検討にはGeneralized Additive Model(GAM)法を適用、漁獲量を3ランク(漁獲量0、1~3、4以上)に分類することによって、これまで相関がみられないといわれていた海洋環境と漁獲量の相関を明らかにすることができました。また、この研究によって漁獲量の多い海面温度、クロロフィル濃度、海面高さの範囲を示すことができました。

Characterization of bigeye tuna habitat in the Southern waters off Java-Bali using remote sensing data, M. D. S., A. B. Sambar, F. Miura, T. Tanaka A. R. As-syakur, Advances in Space Research, No.55, pp.732-746, 2015.

(参考)「大学院の国際連携による衛星リモートセンシングの人材育成」の平成26年度の実施内容及び成果の概要

漁獲高から推測したマグロの生息適正海洋環境 図:漁獲高から推測したマグロの生息適正海洋環境(海面温度:SST、クロロフィル濃度:SSC、海面高偏差:SSHD)
海面環境の年間変化の様子とマグロの漁獲量の関係 図:海面環境の年間変化の様子とマグロの漁獲量の関係

衛星画像を用いたサンゴ礁の底質マッピング手法に関する研究

Shallow-water benthic identification using multispectral satellite imagery: Investigation of the effects of improving noise correction method and spectral cover

文部科学省 宇宙科学技術推進調整委託費(宇宙航空科学技術人材育成プログラム)の事業である「大学院の国際連携による衛星リモートセンシングの人材育成」による成果として、ウダヤナ大学(インドネシア)から本学大学院理工学研究科博士後期課程へ留学中のM. D. M. Manessaさんの論文が、国際学術誌(査読付)に掲載されました。

本研究では、衛星画像の波長分解能とノイズ除去方法の向上が、サンゴ礁底質マッピングの精度に与える影響を明らかにしました。

(参考)「大学院の国際連携による衛星リモートセンシングの人材育成」の平成26年度の実施内容及び成果の概要

WorldView-2画像を用いたMeno島沿岸のサンゴ礁の分類例 図:高分解能衛星画像を用いたサンゴ礁底質分類の例(Gili諸島、インドネシア)
(Includes copyrighted material of DigitalGlobe, Inc., All Rights. Reserved)

M. D. M. Manessa, A. Kanno, M. Sekine, E. E. Ampou, N.Widagti and A. R. As-syakur, Remote Sensing, ISSN 2072-4292, No.6, pp.1-15, 2014.

燃えない・強い・柔らかいゲル ―リチウムイオン電池用新規ゲル電解質を開発―

● Journal of Power Sources (Impact Factor: 6.217)に掲載

リチウムイオン電池は身近な携帯用電子機器(携帯電話やノートパソコン)に利用され、現在では、電気自動車などの大型用途への展開が期待されています。しかしながら、電解液に有機溶媒を用いるため高温での発火・爆発や液漏れなど安全面での普遍的な課題が存在し、これを解決するため、電解液の難燃化やゲル化・固体化に関する研究開発が活発に進められています。

大学院理工学研究科物質化学専攻の間 泰佑君(博士前期2年)と藤井健太准教授、吉本信子准教授、森田昌行教授らのグループは、不燃性の有機溶媒と極めて微量の多分岐高分子を用いて、「燃えない・機械的強度が高い・形状自由度が高い」を兼ね備えたゲル電解質を開発し、これをリチウム電池用電解質として応用しました。このゲルは高度な高分子合成技術を必要とせず、簡便に作成できるにも関わらず、実用レベルの性能を示すことが明らかとなり、今後の更なる展開が期待されます。

“High-performance gel electrolytes with tetra-armed polymer network for Li ion batteries”
Taisuke Hazama, Kenta Fujii*, Takamasa Sakai, Masahiro Aoki, Hideyuki Mimura, Hisao Eguchi, Yanko Todorov, Nobuko Yoshimoto*, and Masayuki Morita*, J. Power Sources, 2015, 286, 470-474., DOI: 10.1016/j.jpowsour.2015.04.11

特許:特願2015-050200, 2015年3月13日

有機/無機ナノハイブリッド薄膜を使って着色排水を透明に

● RSC(英国王立化学会)の論文誌Journal of Materials Chemistry A(インパクトファクター=6.626)に掲載

大学院理工学研究科物質化学専攻の中山雅晴教授(学部担当:工学部応用化学科)と博士前期課程2年の森 克将氏(工学部応用化学科卒)らのグループは、界面活性剤分子が集積した有機層とマンガン酸化物ナノシートが交互に積層した有機/無機ナノハイブリッドを独自の電気化学法によって薄膜化し、得られた薄膜を使って着色排水を透明にするプロセスを開発、そのメカニズムを解明しました。 従来の吸着材が嵩高い粉体であるのに対し、この材料は微細加工が可能な薄膜(厚さは1ミクロン程度)であるため、微小流路での脱色や有機汚染物質の除去などに応用できます。一方、炭素繊維など高表面積基体にコーティングすれば大規模な工業プロセスへの展開も可能です。

中性有機色素(p-AAB)を含む水溶液に今回開発した薄膜を浸漬した際の色変化、薄膜のX線回折パターン、ならびに速度論的解析. 図:中性有機色素(p-AAB)を含む水溶液に今回開発した薄膜を浸漬した際の色変化、薄膜のX線回折パターン、ならびに速度論的解析.

A thin film sorbent of layered organo-MnO2 for the extraction of p-aminoazobenzene from aqueous solution
Katsumasa Mori, Sohei Iguchi, Shusuke Takebe, and Masaharu Nakayama*
J. Mater. Chem. A 2015, 3, 6470-6476.

発行日(オンライン):2015年2月20日

ドイツ、エアランゲン大学との共同研究が掲載されました。

工学部の新長州ファイブ奨学金を得て、本学の交流協定大学であるドイツのエアランゲン大学(Friedrich-Alexander-Universitat Erlangen-Nurnberg)に2012年に留学していた医学系研究科博士後期課程2年(当時)の野首智美さんの、エアランゲン大学での研究成果が、Tetrahedron Letters誌に当大学と本学の共同研究論文として掲載されました。 この研究はアゾ基(N=N)を含むビアリールをメイン骨格とする中員環化合物(8員環)を、ジアゾ化合物とアリルエステルとから一段階で得られる入手容易な化合物から簡単に効果的に合成する手法の開発です。 アゾ基を含む中員環化合物は一般には入手困難ですが、生理活性が期待できる化合物も多く、この研究が新しい創薬開発の有効な合成反応の一つとして興味深い結果を与えたものとして興味が持たれます。

ドイツ、エアランゲン大学との共同研究が掲載されました。

Synthesis of dibenzo[c,e][1,2]diazocines - a new group of eight-membered cyclic azo compounds
Tomomi Nokubi, Stephanie Kindt, Tim Clark, Akio Kamimura, Markus R. Heinrich
Tetrahedron Lett. 2015, 56, 316-320: doi:10.1016/j.tetlet.2014.11.064.

バイオマスのソルビトールの変換反応にイオン液体を使った新たな画期的方法を提案

● ChemSusChem (Impact factor = 7.117)に掲載

山口大学大学院医学系研究科応用分子生命科学系専攻の上村明男教授(有機合成化学)と宇部興産の海磯孝二研究員中心とした研究グループは、バイオマスの効率的利用のための重要な反応である、ソルビトールからイソソルビドへの変換反応を、イオン液体を使ってきわめて短時間で効率的に進行させる方法をみいだしました。 この方法ではソルビトールが酸触媒条件でマイクロ波照射をたった10分するだけで、効率的にイソソルビドへと変換できます。バイオマス由来の有用化学物質のソルビトールをこれほど短時間に、インスタント食品を作るがごとくの手軽さで、重要な工業原料であるイソソルビドに変換できるこの方法は、画期的なバイオマス変換方法を提案したものとして高く評価されています。 イオン液体も回収再利用できるため、将来有望なグリーン変換反応として注目されています。

バイオマスのソルビトールの変換反応にイオン液体を使った新たな画期的方法を提案

A Rapid Conversion of Sorbitol to Isosorbide in Hydrophobic Ionic Liquids under Microwave Irradiation
Akio Kamimura,* Kengo Murata, Yoshiki Tanaka, Tomoki Okagawa, Hiroshi Matsumoto, Kouji Kaiso, and Makoto Yoshimoto
ChemSusChem 2014, 7, 3257-3259: DOI: 10.1002/cssc.201402655

プラスチックを高付加価値の化学原料に効率的に変換炭素資源リサイクルに新しい手法を提案

● ChemSusChem (Impact factor = 7.117)に掲載

山口大学大学院医学系研究科応用分子生命科学系専攻の上村明男教授(有機合成化学)と宇部興産の海磯孝二研究員中心としたメンバーは、プラスチックの化学原料化に画期的な方法を開発しました。ナイロンなどのポリアミドを超臨界アルコール中で処理し、その際にグリコール酸を添加しておくと、ヒドロキシカルボン酸に一気に変換できることを見いだしました。 変換効率は70%以上に及び、選択的に生成物を与えます。生成物であるヒドロキシカルボン酸は単純なモノマーであるラクタムよりも市場価値が高いので、プラスチックのから化学原料の合成法として活用が期待される反応です。炭素資源の効率的循環が世界的に注目されている中、一つの流れを作る可能性を持つこの新しい手法に期待がかけられます。

プラスチックを高付加価値の化学原料に効率的に変換 炭素資源リサイクルに新しい手法を提案

Efficient conversion of polyamides to ω-hydroxyalkanoic acids; a new method for chemical recycling of waste plastics
Akio Kamimura,* Kosuke Ikeda, Shuzo Suzuki, Kazunari Kato, Yugo Akinari, Tsunemi Sugimoto, Kohichi Kashiwagi, Kouji Kaiso, Hiroshi Matsumoto, and Makoto Yoshimoto
ChemSusChem. 2014, 7, 2473-2477: DOI: 10.1002/cssc.201402125

ラザフォード後方散乱分光法を用いた汚染物質のポリアミド系RO膜/水分配係数の測定

ラザフォード後方散乱分光法を用いた汚染物質のポリアミド系RO膜/水分配係数の測定

理工学研究科環境共生系専攻の鈴木祐麻助教が日本海水学会第65年会において「進歩賞」を受賞しました。水資源の汚染・枯渇により水不足が世界各地で顕著になりつつあり、逆浸透膜(RO 膜)は海水淡水化技術として一層の普及が予想されています。 受賞の対象となった発表は、汚染物質のポリアミド系RO膜/水分配係数の測定手法を提案したものであり、深さ方向の元素組成を分析するのに適したラザフォード後方散乱分光法の特徴を上手く活用することで、100nm以下と非常に薄いポリアミド層と汚染物質の親和性を定量評価することが可能となりました。

本研究にて測定が可能となったRO膜/水分配係数は、汚染物質が膜を透過するメカニズムを解明するためには極めて重要な係数であり、今後、膜透過メカニズムの解明およびより高性能なRO膜の開発が期待されます。

【著者】
鈴木祐麻(山口大学大学院理工学研究科 環境共生系専攻)
David G. Cahill(イリノイ大学 アーバナ・シャンペーン校 Departments of Chemistry and Materials Science and Engineering)
Benito J. Marinas(イリノイ大学 アーバナ・シャンペーン校 Department of Civil and Environmental Engineering)

せん断流中のリポソームによる酸化酵素反応の加速化

● アメリカ化学会論文誌ACS Appl. Mater. Interfaces (IF = 5.008) に掲載

せん断流中のリポソームによる酸化酵素反応の加速化

応用分子生命科学系専攻博士後期課程2年 夏目友誉氏と吉本誠准教授は、微小円管内層流において、酸化酵素を内包させた脂質膜小胞(リポソーム)による触媒反応が加速化される現象を見出しました。 リポソームの膜構造はせん断流中で変化するため、リポソーム内の酵素分子は液本体に放出されます。せん断流中の酵素は静止液系よりも著しく高い活性を発現するとともに、高活性な酵素がリポソームの共存下で長時間安定に維持されることを明らかにしました。 この現象は、生体内やマイクロリアクターなどの微小流路中の物質移動や酵素反応の制御に応用できる可能性があります。

ACS Appl. Mater. Interfaces, DOI: 10.1021/am405992t
T. Natsume and M. Yoshimoto, “Mechanosensitive liposomes as artificial chaperones for shear-driven acceleration of enzyme-catalyzed reaction.”

ヨウ素を特異的に捕獲できる薄膜材料を開発

● 宇部日報(平成25年11月19日付)、朝日新聞(平成25年11月29日付)に掲載
● 日本分析化学会の英文誌「Analytical Sciences」のHot Articleに選出、ならびに表紙図に採用

ヨウ素を特異的に捕獲できる薄膜材料を開発

大学院理工学研究科の中山雅晴教授、博士前期課程1年佐藤あゆさんらの研究グループは、カチオン性界面活性剤(ヘキサデシルトリメチルピリジニウム)を数nmの空間に集積させたマンガン酸化物シートの積層体を電気化学的に作製し、この材料を使ってヨウ化物イオンを高い効率で選択的に捕獲することに成功しました。

福島第一原子力発電所事故により、数多くの放射性核種が環境中に放出されました。放射性ヨウ素のうち、ヨウ素129は半減期が1570万年ときわめて長いため、ヨウ化物イオンとして海水や地下水などに拡散する懸念があります。従来の汚染水浄化装置がセシウムなど陽イオンの捕集に効果的であるのに対し、今回の技術はヨウ化物イオンの選択的回収に有効です。マンガンは安価かつ環境負荷が小さい元素である上、独自に開発した電気化学的薄膜作製法は常温、水溶液中で進行するクリーンプロセスです。

PET上に作製したマンガン酸化物フィルム

銅触媒による新しい3級アルキル化反応を開発

● アメリカ化学会論文誌 J. Am. Chem. Soc. (IF=10.677)に掲載

銅触媒による新しい3級アルキル化反応を開発

大学院理工学研究科・物質工学系学域・西形孝司准教授らのグループは、これまで用いることが難しかった分解しやすいα-ハロカルボニル化合物を3級アルキル源とする“銅触媒3級アルキル化反応”の開発に成功しました。また、この反応における触媒素過程の活性種としてラジカルが発生することを反応機構解析により証明し、開発した反応の理論的な解釈にも成功しました。

従来では数段階を要した3級アルキル基の導入を1段階で達成可能な方法として画期的であり、天然物をはじめとする様々な有用物質の効率的合成への応用が期待されます。

An Efficient Generation of a Functionalized Tertiary-Alkyl Radical for Copper-catalyzed Tertiary-Alkylative Mizoroki-Heck type Reaction
Takashi Nishikata*, Yushi Noda, Ryo Fujimoto, and Tomomi Sakashita
J. Am. Chem. Soc., 2013, 135, 16372?16375. DOI: 10.1021/ja409661n
Publication Date (Web): October 21, 2013 (Communication)

新長州ファイブ奨学金でUCL留学中に新しいシクロプロパン化反応を開発

● Angewandte Chemie International Edition (IF = 13.734)に掲載

新長州ファイブ奨学金でUCL留学中に新しいシクロプロパン化反応を開発

アミノシクロプロパンは生理活性物質や天然物にも多く見られる構造で、天然からだけでなく有機合成的に作り出す工夫がこれまでなされてきました。しかし実際は、アミノシクロプロパンはなかなか作りにくい構造であり、せっかく作ったアミノシクロプロパン構造を壊すことなく簡単に安く作り出す方法の開発がこれまで望まれてきました。 工学部の新長州ファイブ奨学金を得てイギリスのロンドン大学化学科(UCL:150年前の長州ファイブの留学先)に留学していた医学系研究科応用分子生命科学系専攻博士後期課程2年(当時、現カナダMcGill大学博士研究員)の石川慎吾さんらは、UCLのWilliam B. Motherwell教授の指導の下、アミノシクロプロパンの簡単な新しい合成反応を開発しました。 この反応は、カルバミン酸エステルを出発物質とし、これにオルトギ酸エチル、アルケン、銅粉、亜鉛粉、塩化亜鉛、塩化トリメチルシリルを加えるだけで進行して、一段階で効率的にアミドシクロプロパンを得る方法です。 アミドシクロプロパンはシス選択的に合成でき、アミド基は容易にアミノ基に変換できるので、これまで作るのが難しいとされてきたアミノシクロプロパンを速やかかつ大量(~4.5g)に得ることができるようになりました。 またこの方法を使えばアストラゼネカ社が開発した「チカグレロル(AZD6140)」のシクロプロパン部分の、シスの立体配置を持つ誘導体の部分構造も容易に得られます。この研究は、インパクトの高い研究成果として世界から注目されています。

A Rapid Route to Aminocyclopropanes via Carbamatoorganozinc Carbenoids
Shingo Ishikawa, Tom D. Sheppard, Jarryl M. D'Oyley, Akio Kamimura and William B. Motherwell*
Angew. Chem. Int. Ed. 2013, 52, 10060 ? 10063: DOI: 10.1002/anie.201304720.

光学活性な多環式化合物の合成法に新手法を提案

●英国化学会のChemical Communications (Impact factor = 6.169)及びアメリカ化学会のOrganic Letters (Impact factor = 5.862)に掲載

山口大学大学院医学系研究科応用分子生命科学系専攻の上村明男教授(有機合成化学)らを中心としたメンバーは、生理活性が注目されている多環式含窒素複素環化合物の合成に新手法を提案しました。 上村教授らは独自で開発した方法で容易に得られる光学活性なβ-アミノ-α-メチレンエステルにスズラジカルを作用させることで、スズ原子へのラジカル置換反応が進行することを見いだし、これまでに合成が容易でなかった、スズの入った五員環化合物が高効率に得られること示しました。 そしてこの化合物を、パラジウム触媒を用いて1,2-ジハロベンゼンとカップリングすると、多環式の含窒素複素環化合物に短段階で変換できることを明らかにしました。ここで得られるベンズイソインドール骨格は生理活性作用を持つ複素環式化合物として知られており、この方法を活用することで新規生理活性物質の探索などに向けた研究に興味深い方法論を開くことが可能となると考えられます。

光学活性な多環式化合物の合成法に新手法を提案

Published in Chem. Commun. 2012, 48, 6592 -6594. (Impact factor = 6.169)
Unexpected formation of stannolanes and trigonal bipyramidal tin complexes by radical cyclization reaction
Akio Kamimura,* Shingo Ishikawa, Fumiaki Noguchi, Takaaki Moriyama, Masahiro So, Toshihiro Murafuji, and Hidemitsu Uno

Also in Org. Lett. 2013, 15, ASAP: DOI: 10.1021/ol4003948. (Impact factor = 5.862)
Pd-catalyzed Tandem sp2-sp3 Coupling Reaction of Chiral Stannolanes: an Efficient Preparation of Optically Active Tetrahydrobenz[f]isoindoles
Akio Kamimura,* Masahiro So, Shingo Ishikawa, and Hidemitsu Uno

液体燃料のメソスケール管内安定燃焼を実現

● Proceedings of the Combustion Institute (Impact factor = 3.633)に掲載

理工学研究科三上真人教授(機械工学専攻)らを中心とする研究グループは、気体燃料および液体燃料を数ミリ程度の細径管内で安定燃焼させる手法を開発しました。

マイクロコンバスター(超小型燃焼器)は、次世代の超小型高密度エネルギー発生装置として、また、高効率超小型ヒータとして期待されています。液体燃料を用いるとそのエネルギー密度はリチウムイオン電池より二桁程度大きくなります。本研究ではまず気体燃料を対象に、細径管内に金属メッシュを挿入すると再生予熱効果により消炎直径以下の細径管内でも安定燃焼が可能となることを見出しました。次に、液体燃料の静電微粒化技術を細径管内に適用しメッシュによる再生予熱効果も利用することで、液体燃料が壁面付着することなく管内安定燃焼する条件が存在することを見出しました。触媒や外部加熱を用いることなく細径管内で液体燃料を安定燃焼させたのは世界で初めてです。本研究成果は今後の液体燃料を用いたマイクロコンバスター研究および開発のベースとなると期待されます。

Published in Proc. Combust. Inst. 34: 3387 3394, 2013 (Impact Factor 3.633)
Mikami, M., Maeda, Y., Matsui, K., Seo, T., Yuliati, L., "Combustion of gaseous and liquid fuels in meso-scale tubes with wire mesh"

液体燃料のメソスケール管内安定燃焼を実現 Stabilized flame inside a meso-scale tube with ethanol/n-heptane spray and air.

セルロースのグルコースへの新しい変換反応を開発

● Royal Society of Chemistry(英国化学会)のGreen Chemistry (Impact Factor = 6.320)に掲載

山口大学大学院医学系研究科応用分子生命科学系専攻の上村明男教授(有機合成化学)と吉本誠准教授(生物化学工学)らを中心としたメンバーは、環境に配慮したリソースとしてのセルロースを、イオン液体を用いることで容易にグルコースに変換する反応を開発しました。この方法では、これまで用いられることのなかった疎水性のイオン液体を用いるので、得られたセルロースとイオン液体の分離が容易にできる特徴があります。グルコースの収率は50%程度であり効率的なセルロースのグルコースへの変換が可能となりました。用いたリチウム塩も回収できるため、バイオリソースの有用物質への新たな変換反応として期待されます。

Published in Green Chem. 2012, 14, 2816  2820, (Impact Factor 6.320), Combination use of hydrophobic ionic liquids and LiCl as a good reaction system for the chemical conversion of cellulose to glucose
Akio Kamimura,* Tomoki Okagawa, Natsumi Oyama, Tamami Otsuka and Makoto Yoshimoto, DOI:10.1039/C2GC35811E

セルロースのグルコースへの新しい変換反応を開発

2012年度システム制御情報学会論文賞を受賞

本学理工学研究科情報・デザイン工学系学域の若佐裕治准教授が、2012年度システム制御情報学会論文賞を受賞し、2012年5月22日に開催された第56回システム制御情報学会研究発表講演会にて表彰されました。

2012年度システム制御情報学会論文賞を受賞

論文題目は「Particle Swarm Optimization アルゴリズムの安定性解析」で、論文賞はシステム制御情報学会論文誌に最近2年間に公表された学術・技術に寄与するところの大きい論文の著者に贈呈されるものです。

受賞対象論文は、近年注目されているParticle Swarm Optimization アルゴリズムとよばれる一種の最適化アルゴリズムに対して、その性質を制御工学的なアプローチによって解析したものです。この研究により、従来、経験則に従って決定されていたアルゴリズムの設定値と最適化の特性との関係をより正確に把握することが可能となり、アルゴリズムを扱い易くするための情報が整理されました。こうした点が、システム・制御・情報の分野の発展に寄与する優れた研究として高く評価されました。

若佐裕治准教授は受賞について、「制御工学と最適化手法は私の主な研究フィールドですが、これらに対する自分らしいアプローチが評価され、大変嬉しく思っています。この賞を励みとして、専門性を生かしてより良い研究を目指し、社会に貢献できるよう研鑽を積んでいきたいと思っています。」と抱負を述べています。

「新しい創傷治癒促進作用を持つ物質を開発」

● アメリカ化学会のThe Journal of Organic Chemistry (インパクトファクター = 4.002)に掲載

大学院医学系研究科応用分子生命科学系専攻(工学系)の上村教授と同研究科情報解析医学系専攻薬理学講座の乾教授らのグループは2−ベンズアゼピン誘導体が新しい創傷治癒促進効果を持つことを見いだしました。この薬剤は細胞増殖を刺激することなく細胞遊走のみを活性化して治癒を促進するユニークな薬剤です。これらの化合物の迅速な合成を開発し、多数の誘導体を光学選択的に合成することに成功し、それを元に構造活性相関を明らかにしました。この研究は山口大学がこれまで進めてきた医学部と工学部の積極的な連携による成果であり、全国的にも大変興味が持たれています。

「新しい創傷治癒促進作用を持つ物質を開発」

Published in J. Org. Chem. 2012, 77, 4017 – 4028(Impact Factor 4.002)、
Concise Synthesis of 2-Benzazepine Derivatives and Their Biological Activity,
Masahiro So, Tomoko Kotake, Kenji Matsuura, Makoto Inui, and Akio Kamimura

「ディーゼルエンジンのCO2・排気有害物質・騒音の低減手法の開発」

● International Journal of Hydrogen Energy (Impact factor = 4.053)に掲載

理工学研究科三上真人教授(機械工学専攻)らを中心とする研究グループは、ディーゼルエンジンのCO2・排気有害物質・騒音の低減手法を開発しました。

本研究ではディーゼルンエンジンにおいて軽油の筒内高圧遅延噴射時に吸気へ水素添加を行うことで、高負荷条件においても上死点付近で緩慢燃焼を実現でき、熱効率を低下させることなくCO2低減と低騒音化が可能であることを示しました。

さらに、高EGR(排気ガス再循環)と組み合わせることで、熱効率を低下させることなくNOx(窒素酸化物)とスモークの大幅な低減も可能であることを示しています。本研究は工業的に有用であるだけでなく、水素アシストディーゼル燃焼という新しい燃焼法の基本的理解という学問的意義も大きい内容と言えます。また、本研究は宮本亨君(システム設計工学系専攻)の2011年度博士論文の一部としてもまとめられています。

「ディーゼルエンジンのCO2・排気有害物質・騒音の低減手法の開発」

Published in Int. J. Hydrogen Energy 36: 13138-13149, 2011 (Impact Factor 4.053)
Miyamoto, T., Hasegawa, H., Mikami, M., Kojima, N., Kabashima, H., Urata, Y., “Effect of Hydrogen Addition to Intake Gas on Combustion and Exhaust Emission Characteristics of a Diesel Engine”

~廃ナイロンを高付加価値ファインケミカル材料へ~

● 炭素資源の化学リサイクルの経済的問題を効果的に解決する新手法を提案Green Chemistry (Impact factor = 5.472)に掲載

山口大学大学院医学系研究科応用分子生命科学系専攻の上村明男教授(有機合成化学)らを中心としたメンバーは、環境科学において興味が持たれているプラスチック化学リサイクルの分野に、合成化学的テクニックを駆使した画期的な新しい方法を開発しました。

上村教授らはナイロン6やナイロン12を超臨界アルコールで処理すると、原料のラクタムではなくそれがさらに反応したヒドロキシカルボン酸に効果的に変換できることを示しました。ヒドロキシカルボン酸は市場的にはラクタムよりも付加価値の高い化学原料として知られているため、ナイロンを単純に化学リサイクルしてナイロンに戻すよりも新しい価値を生み出す反応として使うことが可能となります。

これまでに廃プラスチックの化学リサイクルにおいて付加価値の高い材料へと変換する手法は知られていなかったので、この方法を活用することで資源リサイクル科学に経済的にも化学的にも興味深い方法論を開くことが可能となると考えられます。

廃ナイロンを高付加価値ファインケミカル材料へ

Direct conversion of polyamides to ω-hydroxyalkanoic acid derivatives by using supercritical MeOH
Akio Kamimura, Kouji Kaiso, Shuzo Suzuki, Yusuke Oishi, Yuki Ohara, Tsunemi Sugimoto, Kohichi Kashiwagi, and Makoto Yoshimoto
Green Chem. 2011, 13, 2055  2061

日本真空協会スパッタおよびプラズマプロセス技術部会(SP部会)部会賞受賞

本学理工学研究科諸橋信一教授が、平成23年度日本真空協会スパッタリングおよびプラズマプロセス技術部会(SP部会)部会賞を、平成23年7月26日開催の第124回定例研究会にて受賞し表彰されました。

小金井真准教授

受賞論文は「Nb Thin Films Fabricated by Magnetic Field Distribution Variable-type Facing Target Sputtering System : J. Vac. Soc. Jpn, Vol. 54, 181-183, 2011」で、真空を破らずに可動磁場発生機構により対向ターゲット間の磁場分布を変化させて堆積速度を5倍程度変化でき、1つのカソードで薄膜作製に必要な低ダメージ性と高生産性の両立を実証した。

独創的なコンセプトが含まれているとして学術的に高く評価され、薄膜工学における進歩・発展に顕著な功績があると認められたことによります。

諸橋信一教授は、2009年度第9回日本真空工業会イノベーション賞に引き続きの受賞について、「今後も大学の立場からではあるが、我が国の基盤産業である「モノ作り」産業へ微力ながらも貢献したいと考えている。」、と抱負を述べています。

日本リモートセンシング学会論文奨励賞を受賞(5月26日)

このたび、本学理工学研究科 神野有生助教(社会建設工学専攻)が日本リモートセンシング学会論文奨励賞を受賞されました。

受賞の対象となった論文は、「光学理論モデルのセミパラメトリック表現に基づく浅水域の汎用水深分布予測法」であります。

この論文は、サンゴ礁などの浅い水域を撮影した衛星画像を用いて、高解像度の水深マップを作成する技術を提案したものであり、 光学理論と最新の統計学の成果の組み合わせにより、従来技術より高精度な水深マッピングが可能となりました。

このような水深マップは、水環境の流れ・波・水質・生態系などの数値解析の基礎情報となる可能性を持ちます。

第49回 空気調和・衛生工学会賞学術論文部門賞の受賞

本学理工学研究科感性デザイン工学専攻の小金井真准教授が、第49回空気調和・衛生工学会賞論文賞(学術論文部門)を受賞し、5月17日の空気調和・衛生工学会通常総会後の学会賞表彰式にて表彰されました。

小金井真准教授

論文題目は「非結露型次世代空調システムに関する研究」(第1報~第4報)で、デシカント外調機内にて処理空気の冷却と吸着材の再生のためにCO2ヒートポンプを活用する新方式を提案し、実験とシミュレーションによりその有効性を検証した研究です。種々の既存システムとの比較検討、冷房通期の消費エネルギー量の解析、暖房加湿運転時の性能検討などを行うことにより提案方式の実用性を広範に調べたものです。これらにより希有な知見や更なる開発に向けた課題などが提供されたことが今後のデシカント空調システムの開発や設計に大きく貢献するものであるとして学術的に高く評価されたものです。

小金井准教授は受賞について、「このたびは名誉ある賞をいただき大変光栄に存じております。この受賞を励みに環境負荷低減型の新しい空調システムの研究に一層励んでまいりたいと存じます。」と抱負を述べています。

Depolymerization of Unsaturated Polyesters and Waste Fiber-Reinforced Plastics by using Ionic Liquids: The Use of Microwaves to Accelerate the Reaction Rate
-イオン液体とマイクロ波照射を組み合わせた新しいプラスチックの再資源化法を開発-

● ChemSusChem(Inpact Factor 6.325)に掲載

上村明男教授(応用化学科)、大学院生山本茂弘君(応用分子生命科学系専攻)らは、難分解性プラスチックであるFRP(繊維強化プラスチック)をイオン液体中マイクロ波照射を行うことで、きわめて短時間に効果的に分解し、その成分であるモノマーとガラス繊維を再利用可能なかたちで回収する新しい手段を開発しました。イオン液体は繰り返して利用が可能であり、興味深い化学リサイクル法として注目されます。プラスチックの資源循環リサイクル技術が注目されている現在、その化学リサイクルに向けて有効な技術を提供でき、今後のリサイクル技術の発展に寄与することが期待されます。なお、この論文の一部は2010年度プラスチックリサイクル化学研究会のポスター賞を受賞しました。

イオン液体とマイクロ波照射を組み合わせた新しいプラスチックの再資源化法を開発

Published in ChemSusChem, 2011, 4, 644 649 (impact Factor 6.325)
Akio Kamimura, Shigehiro Yamamoto and Kazuo Yamada, Depolymerization of Unsaturated Polyesters and Waste Fiber-Reinforced Plastics by using Ionic Liquids: The Use of Microwaves to Accelerate the Reaction Rate (644 649)
See also; http://www.fsrj.org/output/5,%20hyousyou/award.html

Surfactant-Induced Electrodeposition of Layered Manganese Oxide with Large Interlayer Space for Catalytic Oxidation of Phenol
-界面活性剤とマンガン酸化物の相補的な自己組織化による新しい有機/無機ナノハイブリッドの合成―

● アメリカ化学会の論文誌Chemistry of Materials(Impact Factor 5.368)に掲載

中山雅晴教授(応用化学科)、大学院生社本光弘君(物質化学専攻)、上村明男教授(応用化学科)は、界面活性剤存在下でマンガン(II)イオンを電気化学的に酸化すると会合したカチオン性界面活性剤上でマンガン酸化物が二次元成長し、マンガン酸化物シートが界面活性剤層をサンドイッチした多層構造からなる有機/無機ナノハイブリッドが形成されることを見いだしました。マンガン酸化物層間(ゲスト層)は数ナノメートルと広いため、水溶性有機分子に対する反応場として好適です。マンガン酸化物シートは電極からの電子を層間の有機分子に受け渡しできるので、層間を利用した選択的かつ効率的な触媒反応が可能な“エレクトロナノリアクター”と見なすことができます。このようにして、従来の絶縁性多孔物質(クレイ、ゼオライトなど)では実現できなかった新しいホストーゲスト科学を創造できると期待されます。

X線回折チャートと断面TEM写真 図。界面活性剤/マンガン酸化物の多層形成を示すX線回折チャートと断面TEM写真

Published in Chemistry of Materials, WEB公開中(DOI: 10.1021/cm101970b)
M. Nakayama,* M. Shamoto, A. Kamimura, “Surfactant-Induced Electrodeposition of Layered Manganese Oxide with Large Interlayer Space for Catalytic Oxidation of Phenol”

中国地域産学官連携功労者表彰を受賞

齊藤俊教授 産学官連携活動における大きな成果 「海面突入時の衝撃を低減する自由降下式救命艇」開発の共同研究 -

齊藤俊教授が民間との共同研究で「自由落下式救命艇の座席構造と乗員が受ける衝撃を解析、座席に組み込む緩衝材の振動衝撃評価について技術指導」を行い、国内で初めて高さ30mから安全に降下できるタイプの救命艇の開発に寄与し、中国地域産学官連携功労賞表彰を受賞しました。開発した救命艇は、国際海事機関IMO基準をクリアしているだけでなく、乗員の安全性まで配慮した設計となっており、新たな国際基準となる仕様となっています。本功績が高く評価され2010年3月17日(水)の第1回山口県産業技術振興奨励賞「山口県知事特別賞」に次ぐ受賞となりました。

斉藤教授

第48回 空気調和・衛生工学会賞学術論文部門賞の受賞

本学名誉教授 中村安弘名誉教授、栗山憲名誉教授、大学院理工学研究科 山本正幸助教が、 5月18日に第48回 空気調和・衛生工学会賞学術論文部門賞を受賞しました。

論文題目は、「非線形性を有する空調用熱源プラントの最適運転制御に関する研究」で、「第1報-冷凍機とポンプ動力の非線形性を線形計画法で扱うための手法とその効果」及び「第2報-蓄熱槽の放熱運転におけるオン-オフ制御のポンプ動力の最適性に関する考察」が学術的に高く評価され、空気調和・衛生工学における進歩・発展に顕著な功績があると認められたことによります。

受賞対象論文は、通常ならば大規模な計画問題となる蓄熱式空調用熱源プラントの一日を通した最適運転制御に関して、混合整数計画法を用いた実用的な近似解法を提案すると共に、線形計画法では定式化が難しい段階的な出力を行う冷凍機やオン-オフ制御のポンプ動力も厳密に最適化できる計算手法を提案したものです。

山本正幸助教は受賞について、「中村先生、栗山先生と共に研究に励んだ6年間の成果が、この論文賞の受賞として評価され、大変、嬉しく思います。今後も、微力ながら温熱環境に関する研究や人のためになる研究を行っていきたいと思います。」 と抱負を述べています。

上村教授のグループがタミフルの形式合成を達成

● アメリカ化学会の論文雑誌J. Org. Chem. (Impact Factor 3.952)に掲載

世界的流行が懸念されている新型インフルエンザですが、その対処法の一つとしてのタミフルの量産が求められています。タミフルは現在、天然物であるシキミ酸から合成されていますが、天然物に一切頼らない化学合成が世界的に模索されてきています。上村教授(医学系研究科応用分子生命科学系専攻工学系)らのグループは、入手容易なピロール誘導体から10段階でタミフル合成の中間体までの合成に成功しました。この方法は保護基をほとんど用いないですむだけでなく、窒素官能基を導入するためにアジドを経由することなく達成しているので、興味深い方法であり、アメリカ化学会の論文雑誌J. Org. Chem. (インパクトファクター = 3.952)に掲載されました。

タミフルの形式合成の達成

Published in J. Org. Chem. 2010, 75, 3133-3316 (Impact Factor 3.952)
Akio Kamimura and Toshiki Nakano, "Use of the DielsAlder Adduct of Pyrrole in Organic Synthesis. Formal Racemic Synthesis of Tamiflu"

2009年度環境大臣賞およびGSC賞を受賞!!

● 「配管抵抗低減剤を用いた省エネルギー技術の開発と普及」佐伯隆准教授

水にある種の界面活性剤を添加すると、流れの抵抗が激減するという抵抗低減効果を省エネルギー技術として実用化させた。大学のシーズ技術をもとに産学公共同研究の成果として確立した本技術は、水循環の動力エネルギーを20~50%削減できる。これまで国内130件の導入実績(一般ビル、高層オフィスビル、総合病院、大規模店舗、空港などの水循環空調設備)があり、今後とも我が国のCO2削減に寄与できるものである。本功績に対し、2008年度に中国地域産官学コラボレーションセンターより大学発ベンチャー功労賞、2009年にグリーンサステイナブルネットワーク((財)化学技術戦略開発機構内)よりGSC賞を、また総合的な環境負荷削減に大きく貢献した業績として、環境大臣賞を受賞した。

2009年度環境大臣賞およびGSC賞を受賞!!

開発した添加剤を水に加えると、撹拌しても渦ができない流体に変化する。(この写真は化学工学会の機関誌「化学工学」4月号に掲載される)

「対向スパッタ装置の高機能化とそれを利用した薄膜作製方法の開発」

● 第9回日本真空工業会イノベーション賞表彰記念論文

諸橋信一教授(電気電子工学科)の考案による回転機構及びスパッタモード可変機構をもつ新型低温スパッタ装置とそれを利用した薄膜作製方法で、1)平成17、18年度経済産業省地域新生コンソーシアム「有機EL電極・保護膜形成用低温スパッタ装置の開発」の採択、2)第9回日本真空工業会イノベーション賞表彰、及び3)日本国特許3936870号取得と、科学技術振興機構の特許化支援による米国、韓国、台湾への2件(PCT/JP2008/058621、PCT/JP2009/058976)の国際特許出願の実績を持つ。

回転機構及びスパッタモード可変機構をもつカソードにより、低温・多元・コンパクト・スパッタモード可変を特徴とする高機能対向スパッタ装置である。これらの機構により電子デバイス作製に不可欠な低ダメージ性と高生産性の両立を、1つのカソードで実現した。

可動磁場発生機構により磁場分布を切り替える技術には独創的概念が含まれ、将来大きく伸びる可能性を秘めている。太陽電池や有機EL等の多層薄膜構造をもつフィルムベースエレクトロニクス・ディスプレイ用途に役にたつ技術であり、国内外真空及び半導体装置メーカーへのライセンス契約を考えている。

真空ジャーナル

真空ジャーナル、128号pp.28-29, 2010年

Displacement measurements using Global Positioning System for rock movements -Fundamentals, new developments and practical applications-

●基調講演:岩工学に関する韓国・日本ジョイントシンポジウム

清水則一教授(社会建設工学科)が高精度化に成功し、その技術をもとに共同開発したGPS変位計測システムは、地すべり、高速道路斜面、石灰石鉱山、ダムなどの安全監視に数多く使われている。 技術開発の歴史、基礎理論、新しい研究成果について実用事例を交えて講演した。 特に、このシステムを活用して、地すべり斜面下に高速道路トンネルを安全に建設した技術に対して、平成20年度岩の力学連合会の技術賞を受賞している。

基調講演中の清水教授

A keynote address at 2009 Korea-Japan Joint Symposium on Rock Engineering:
Prof. N. Shimizu, "Displacement measurements using Global Positioning System for rock movements -Fundamentals, new developments and practical applications- ", pp. 17-43, 2009,10 (Suwon, Korea)

Spatially separated intrinsic emission components in InGaN ternary alloys

● Physical Review B (Impact Factor 3.3)への掲載

山田陽一准教授(電気電子工学科)らが、光デバイスの研究開発分野において注目されている窒化物系化合物半導体に固有の高効率発光機構に関する実験的研究を取り扱った論文。

ナノスコピックな実験的観測結果に基づいた独創的な論点が注目され、高く評価されている。

下図は近接場光学顕微分光法により、空間分解能30ナノメートルで測定したInGaN混晶薄膜におけるバンド端発光の発光強度分布を示している。InGaN混晶のバンド端発光にはエネルギー的に分離された本質的な2つの発光成分が存在し((a)高エネルギー側と(b)低エネルギー側)、その2つの成分は空間的にも分離していることを明らかにした。

バンド端発光の発光強度分布

Published in Phys. Rev. B, Vol. 80, No. 19 (2009), p.195202 (Impact Factor 3.3)

Trace inequalities on a generalized Wigner-Yanase skew information

● Journal of Mathematical Analysis and Applications への掲載

この雑誌は、数学関連雑誌の中ではインパクトファクターが高く、国際的注目度や学術面での影響力が大きい。量子力学でよく知られている不確定性原理を改良したもので、科学研究費の獲得にもつながっている。

不確定性関係

Published in J. Math. Analysis and Applications, Vol. 356(2009), pp. 179-185
Dr. S. Furuichi, K. Yanagi and K. Kuriyama, “Trace inequalities on a generalized Wigner-Yanase skew information”

Oscillation and Synchronization in the Combustion of Candles

●The Journal of Physical Chemistry A (Impact Factor 2.9), Vol.113, No.29の表紙への実験データ写真の掲載(図左)と 論文掲載。

この論文は国内5大学の研究者の共同研究による成果で、実験的研究の部分を山口大学の学生・教員が担当し、実験データがこの雑誌のVol. 113, No.29の表紙を飾り、国際的な注目を集めている。

内容は、ろうそくの炎が非線形振動子であり、複数のろうそくの炎の間で同相・逆相の同期振動現象が観測され(図右)、そのモデル化と数値解析に成功したもの.

Vol. 113, No.29の表紙

Appeared on the cover page of J. Phys. Chem. A, Vol.113 (2009), No.29, and Published in the Journal pp. 8164-8168
Dr. H. Kitahata, J. Taguchi, A. Osa, H. Miike et al., “Oscillation and Synchronization in the Combustion of Candles”